22
2019

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/500 ISO3200
ACROS
さて、”春のレンズ祭り”の最後に手に入れました「のくとん」ことフォクトレンダーノクトンクラシックSC 35mmF1.4ですが、大変気に入って毎日使っております。
しかし、「のくとん」を使いこなすということは、マニュアルフォーカスレンズを距離指標に則ってノーファインダーで使うということで、何の電子的アシストもない昔ながらのやり方をマスターせねばならないということでもあります。
上の写真の中のワタシはファインダーを覗いておりますが、ほとんどファインダーも使いません。かろうじて余裕があるときは背面液晶くらいは見ることはできますが、ちんたらと背面液晶を凝視してピントを合わせようなんてムリな相談です。
構図の確認にちらっと見るくらい、でしょうか。
慣れと熟練が必要な職人芸の世界ですね。
そんな、ノーファインダーマニュアルスナップの修業をしているというお話です。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/500 ISO800
ACROS
そもそも、このオートフォーカスが当たり前のデジカメの世界で、なんでわざわざそんなノーファインダースナップの修業なんぞをしているのか?
それは、何と言っても”素早く撮影できる”からです。
デジタルカメラのオートフォーカスというのは、カメラとレンズの性能、天候や時間帯などの光の条件などに左右されるものです。常にベストな性能が発揮される保障はないもので、言ってみれば「やってみなければわからない」ものです。
どんな最新のカメラであっても、フォーカスしている間のほんのわずかな間、カメラマンは待たされることになります。そして、ストリートスナップにおけるシャッターチャンスは、そのほんのわずかな時間待たされてるうちに、過ぎ去ってしまうものなのです。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/250 ISO800
RAW現像
たとえば上の写真のようなショットの場合、これは街の全景の中の人々を「群衆」として写したい、という意図が最初からあるので、フォーカスは「無限遠」です。絞りをF5.6以上に絞って、距離指標の「∞」マークに合わせておけばパンフォーカスになりますので、全体にフォーカスが合った状態になるというわけです。
こういうショットの場合は、話は最も簡単ですね。集中すべきはフレーミングだけで、ノーファインダーである必要もないですね。堂々とファインダーを覗いて、今だ、というシャッターチャンスを待てばいいだけです。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/500 ISO1250
RAW現像
さて次は上の写真のような、前から歩いてきた人物を撮りたい、と思ったような場合。
マグナムフォトのブルース・ギルデンじゃないですが(笑)、ストリートを歩いていて「あ、撮りたい!」と思わせる人物というのはいるものです。もしくは、普通に見える人物のふとした魅力的な表情とか、ですね。
この人物も、前からどんどん歩いてきてるので、ちゃんとフォーカスの合ったシャッターチャンスはホントに一瞬です。レリーズ1回だけが許された時間で、その一発勝負を逃さないためのマニュアルフォーカスというわけなのです。
換算50mmくらいの場合、これだと距離は2mくらいでしょうか。人物メインのスナップを撮る場合は、だいたい2mから3mくらいがフォーカスの距離になります。

カメラを首からストラップで吊るしたとき、カメラマンからカメラを見下ろしたときこんなカンジだと思います。
マニュアルフォーカスのレンズの場合、このように上から見るように造られていて、全ての目盛りをここで合わせるようになっています。
赤いラインを追加しましたが、このラインが基準点です。マウントアダプターの上、レンズの根元にある白い『●』がゼロポイントですね。その先がフォーカスリング、白い文字がメートル、赤い文字がフィート表示です。
そしてその先が絞りリングです。なので、いまこの状態は『絞りF4、フォーカス距離2mちょい』になっているというわけです。
ちなみに……白い●マークの左右に展開している目盛りですが、勘のいい方ならおわかりかも知れません。これは『被写界深度目盛り』です。F2.8、F4、F8、F11、F16と一段ごとの被写界深度の深さの範囲の目安となるものですね。
F2.8だったら2mから3mの間とほぼ同じ間隔なので、被写界深度は1mくらい、F16なら1.2mから無限遠まで広がっているので、1.2mから先はパンフォーカスなんだな、とわかります。

ちょっとスマホの自撮りなので変な角度になってますが(笑)、前からみるとこんなカンジです。左手はレンズに添えています。フォーカスリングを操作するためのフォーカスレバーがレンズ下にありますので、人さし指は常にそこにある状態です。なんせのくとんレンズはとても小さいので、所定の位置以外に手を置く余裕はないです。
しかし、フォーカスリングはさすがによくできていて、回転させると適度な抵抗感がネットリとして手に心地よい感触。上質な器具の感触、快感です。こういうちょっとした気持ちよさが、マニュアルフォーカスカメラを扱うモチベーションになりますよね。触りたくなりますもん(笑)。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/1000 ISO800
RAW現像
というわけで、ここからは作例をご覧にいれましょう。
吉祥寺駅、中央線快速のホームの西の端ですね。電車大好きなんでしょう。小さな息子のために電車を見せてやっているお母さんです。
このカンジだと、たぶん絞りはF5.6からF7.1くらいでしょうか。レンズに電子信号端子がありませんので、絞り情報はEXIFに残らないわけです。だいたい日中だと、基本の絞りはF5.6くらいにしています。そこから日なたであればさらに絞るし、日陰になれば少し開くこともあります。
カメラの設定は絞り以外、シャッターダイヤルもISOダイヤルもオートにしてあります。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/125 ISO800
ACROS
普段は電車の車内で撮影することはありませんが、ガラガラに空いてたので失礼して1枚だけ。
電車通学する小学生というのは欧米諸国では考えられないことだそうで、観光でやって来て驚愕することのひとつだそうです。
車内でこれくらいの露出だと、絞りはF4くらいでしょうか。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/500 ISO2000
RAW現像
銀座のど真ん中の托鉢僧。一体こんなところでなぜ托鉢しているのか、果たして本物なのか、ちょっと疑問ではありますが、被写体としては魅力的です。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/500 ISO4000
ACROS
数寄屋橋の近くで、西日に照らされた人々を狙っていたら、左から電話の話し声が。OLさんがビジネス通話に熱中しているところを失礼して1枚。
これくらいだと距離は5mくらいでしょうか。ほとんどパンフォーカスの域に入ってますね。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0mm 1/125 ISO2000
Classic Chrome
夜のハモニカ横丁。夜間撮影はのくとんの得意とするところです。なんせNOKTONの”Nokt”はドイツ語で夜を意味するわけで、夜間撮影用レンズと言っても過言ではないかと(笑)。
まあ、要するにF1.4の明るいレンズなので、夜もイケまっせ、くらいの意味だとは思いますが。
でもこの場面ではISO感度けっこう上がっちゃってるので、絞りはF2.8くらいだったでしょうか。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0mm 1/1000 ISO4000
Classic Chrome
この場面では夜のアウトフォーカスを、ディテールの残した形で見てみたいという明確な意図があったので、たぶん絞りはF4くらいだったと思います。結果いろいろ数字は上がっちゃってますが(笑)これくらいのボケ味で撮りたかったので気に入ってる1枚です。
のくとんはちょっと渋い発色のしかたを狙っているレンズなので、富士フイルムのClassic Chromeとたいへん相性がいいと思います。ちょっと相性がよすぎてトイカメラのように見えるときもありますが……。

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/350 ISO800
ACROS
このモデルはふたつ選べるうちの「シングルコート」モデルですので、逆光には弱いです。きっちりフレアやゴーストが出ます。出まくります。
それをふまえた上での絵作りを心がけることが必要で、上の写真の場合は右上から日光が射していますが、それもこの人物の人格を現しているのではなかろうか、と(笑)

Fujifilm X-Pro2
Voighlander NOKTON Classic SC 35mmF1.4
ƒ/1.0 35.0 mm 1/60 ISO1250
RAW現像
ここのブレンド珈琲が大好きで、井の頭公園で撮影したあとはつい寄ってしまいます。武蔵野珈琲店のマスターの手元を撮らせてもらいました。仕上げはLightroomのプリセットで、マットな色合いにしてみました。
マスターはX-Pro2のシャッター音を聴いて「フィルムのカメラみたいな音だね」と鋭いことを言ってましたよ(笑)。
もちろんこの写真はノーファインダーじゃありません。じっくりとファインダーののぞいてフォーカスを合わせて撮った1枚です。
というわけで、難しくも楽しい、ノーファインダーマニュアルフォーカスの世界にハマっているというお話でございました。
このまま腕を磨いて、いつかはライカ、みたいなことになったら……いいですねえ(笑)。
16
2019

Fujifilm X-T3
Touit 2.8/50M
ƒ/11.0 50.0mm 1sec ISO400
Classic Chrome
ドラマー業を無期限休止することを決め、ドラム機材を手放してレンズに替える「春のレンズ祭り」を行ってまいりましたが(笑)、それもいよいよ最後になりました。実用的なレンズたちを手に入れた後で、最後のヤツはちょいと趣味に走ることにしました。
不便は承知で、ライカMマウントレンズです。しかしライカ純正は高価すぎます。そこで「信頼の日本製」、信州コシナの製造する伝説のドイツブランド、フォクトレンダーに決めました。
焦点距離は35mm。Xマウントで使う分には50mm相当の標準レンズとして常用できますし、もしまかり間違って古いフィルムライカボディなんぞ手に入れたとしても、35mmレンズとしてメインで使うことができます。
また、レンズコーティングによって、現代風のMC(マルチコート)と、昔ながらのシンプルなSC(シングルコート)を選ぶことができます。ワタシはどうせなら思い切りレトロな味わいを楽しみたいので、SCをチョイスしました。

Fujifilm X-T3
Touit 2.8/50M
ƒ/11.0 50.0mm 1sec ISO400
Classic Chrome
もちろんライカMマウントのレンズを富士フイルムのXマウントで使うわけですから、マウントアダプターが必要です。今回は富士フイルム純正のMマウントアダプターを同時に中古で購入しました。
レンズの方に電子接点はないのでF値情報などは通信できませんが、マウントアダプターにひとつファンクションボタンがあり、レンズ焦点距離や補正情報などを記憶し呼び出すことができます。このへんはさすが純正です。

Fujifilm X-T3
Touit 2.8/50M
ƒ/7.1 50.0mm 0.5sec ISO200
Classic Chrome
X-Pro2に装着した姿はまるでこれがあるべき姿だと言わんばかりのハマりようです。いやあ、カッコいい。もしかしたらライカに装着するよりカッコいいんじゃないだろうか(笑)。
リングは先端から、絞りリング、フォーカスリングです。XFレンズとは逆ですね。それどころか、全てのリングの回転方向、マウントの装着まで逆回転です。最初にレンズをボディに装着するときにまごついて、うっかりレンズを取り落とすことろでした。レンズの重さは200g。この小ささにしては不釣り合いなほどズッシリとした重みがあります。落として壊したら泣くところでした(笑)。

Fujifilm X-T3
Touit 2.8/50M
ƒ/8.0 50.0mm 1sec ISO400
Classic Chrome
ちなみに比較してみました。どれも同じ解放F値1.4のレンズ。XF23mmF1.4R、XF35mmF1.4RとVoighlander NOTON Classic SC 35mmF1.4です。
ぜんぜん大きさが違いますね。

Fujifilm X-T3
Touit 2.8/50M
ƒ/7.1 50.0mm 0.5sec ISO200
Classic Chrome
さて、こちらはライカMマウント用レンズですから、当然レンジファインダーで使うマニュアルフォーカスレンズです。フジXマウントで使うときはフォーカスアシストなどは使えるにしても、基本的に手動でフォーカスしなければなりません。
さらにストリートスナップで使うときには、ファインダーを覗いているヒマや余裕はほとんどないでしょう。レンズの距離指標を目印に、被写体との距離を目測してフォーカスを決めなければなりません。
昔ながらの、ストリートフォトグラファーの流儀ですね。
慣れは必要になると思いますが、これも新しい挑戦です。頑張ってトライしていこうと思います。
01
2019

Touit 2.8/50M
ƒ/11.0 50.0 mm 1sec ISO800
さて、前回の記事でご紹介しました、なにかついでのようにポチしてしまったレンズ、XF27mmF2.8ですが、その後意外に活躍してくれております。
なにより、X-Pro2に装着した状態がとても収まりのいい姿でして。上の写真がそうですが、もともとこういう姿のカメラだったんじゃないか、と思えるくらいです(笑)。
(こちらはKenkoの39mm→49mmステップアップリングを付けて、Etumiのフジツボフードを付けております。XF27mm使いには定番カスタマイズのようです)
写りの方も、期待以上にしっかり写るレンズです。弱点としては解放F2.8は夜間スナップにはちと暗い、というくらいでしょうか。しかしそんな弱点も何とか工夫して克服してやろう、と思えるほど、なんか可愛いやつです。フジツボフードを付けてからは、レンズキャップもせずにこのままバッグに放り込んでます。
そんなXF27mmF2.8で撮った写真をご覧ください。

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/7.1 27.0 mm 1/500 ISO800

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/7.1 27.0 mm 1/500 ISO5000

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO6400

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO1250

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO1600

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/170 ISO800

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/210 ISO800
まずは無機物のシリーズを。しかし無機物とひと括りにしてますが、コーヒーカップとクルマと敷石ではだいぶ質感が違いますよね。しかしどれもなかなかいいカンジで質感を再現してると思います。

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/5.6 27.0 mm 1/140 ISO800

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO2500

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/8.0 27.0 mm 1/8 ISO800

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/7.1 27.0 mm 1/60 ISO1000
こちら群衆シーンを。

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO3200

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/3.2 27.0 mm 1/125 ISO6400

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/2.8 27.0 mm 1/125 ISO1600

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/8.0 27.0 mm 1/60 ISO2500

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/4.5 27.0 mm 1/60 ISO3200

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/5.0 27.0 mm 1/500 ISO2000
そして人物スナップでした。いずれの被写体においても、描写は文句ないレベルですし、換算41mmの画角は何も考えずに構えて撮ることのできる、ある種万能な画角ではないでしょうか。
AF速度も、爆速とまではいきませんがXF35mmF1.4よりは素早いです(笑)。特に不満のない速度といえるでしょう。

Fujifilm X-Pro2
XF27mmF2.8
ƒ/5.0 27.0 mm 1/125 ISO2000
そんなわけで、コンパクトさに魅かれて導入したXF27mmF2.8ですが、使ってみると意外に使い勝手のいい「付けっぱなし標準レンズ」としての地位を確立しそうな実力の持ち主であることが判明いたしました。
XFレンズシリーズの中では若干地味な存在かもしれませんが、もうちょっと評価されてもいいレンズがXF27mmF2.8なんじゃないかと、ワタシはそう思います。