川の名前

川の名前

だいぶ間が開いてしまいました…前回と同じく川端裕人氏の新刊です。
今作をひと言で言ってしまうなら『川のスタンド・バイ・ミー』でしょうか。川を舞台に、少年達のひと夏の体験が物語られます。
どーも昔から「少年モノ」に弱いのです。いや、ヘンな趣味じゃなく(笑)「少年の成長もの」みたいなのって、弱いです。涙腺に来ちゃうんです。自分が物語の主人公とはかけ離れた、打算に満ちた少年だったからでしょうか。ピュアな少年が一歩大人になる…みたいな作品にはめっぽう弱いわけです。
この作品は、そういった少年の成長物語を主題に置きつつ、川と地域住民、果ては都会の中の自然との付き合い方まで、しっかりと作者の主張の行き届いた作品になってます。そういった意味でも、安心して物語世界に身を委ねられる内容になってると思います。読後も爽やか、帯にあるとおり「しみじみ感動」です。

それにしても、『銀河のワールドカップ』もそうでしたが、主人公と同居する女性キャラがちょっとエッチなのがナイス(笑)。

ご本人の…

このページでレビューした『銀河のワールドカップ』の記事ですが、何と著者の川端裕人氏のブログ『リヴァイアさん、日々のわざ』でリンクされてました(汗)
無責任に書き飛ばしたレビューですが、著者ご本人に読まれてたと思うとちょっと冷や汗が出ますね。

川端氏、ドイツワールドカップには行かれるんでしょうか?また熱い観戦日記を楽しみにしております。

銀河のワールドカップ

銀河のワールドカップ

スポーツは小説と意外と馴染む。試合が進行している最中にプレイヤーの内面で起きている様々なことや、観客には知りえないライフストーリーなど、実際のスポーツ観戦では決して満たされないスポーツの舞台裏を描き出すのに、小説はまさにうってつけだ。スポーツノンフィクションもそれらを補う役目は担っているものの、どうしても入ってしまう書き手の主観が必ずしも正解とは言えない、というもどかしさがある。その点小説世界なら問題ない。「純然たる過程と結果のカタルシス」を楽しむことができるというワケだ。

川端裕人氏がサッカー好きなのは、2002年の日韓ワールドカップ中に公開されていた氏のブログでも知っていたので、いつかはサッカーを素材にした小説を書いてくるだろうとは思っていたが、この『銀河のワールドカップ』はまさに川端氏カラー全開のサッカー小説だった。
主人公はうらぶれた元Jリーガー。現役を引退し一時は少年サッカーの指導者になったものの、ちょっとした誤解から指導者失格の烙印を押され、職にあぶれて公園で酔っぱらっているところに出会った天才肌のサッカー少年達と意気投合し、彼らのコーチを引き受けることになる。この少年達もそれぞれクセがあり、地域のジュニアチームからはみ出した存在だ。いわばはみ出し者同志のサクセスストーリーがこの作品、というワケだ。
『銀河のワールドカップ』というタイトルは、主人公が少年達に
「日本一を目指すなんて小さいこと言うなよ、どうせなら世界一、銀河一を目指してやれ!」
とはっぱをかけるシーンから来ているのだが、もうひとつ、いわゆる『銀河系軍団』と言われるレアル・マドリードにも引っかけている。当然ながらレアルの選手達(作中は偽名だが)に主人公も少年達も憧れているわけだが、憧れを憧れだけで終わらせない、子供達ならではの大胆さが、ラストの大カタルシスに収束して行く。「そんな子供いるわけねーだろ!」と言ってしまえばそれまでだが、こうした少年の夢を実現してしまうファンタジーは川端氏の得意とするところ。今回はスポーツ小説ならではの「純然たる過程と結果のカタルシス」として見事に結実している。久しぶりに、小説を読みながら涙があふれてしまった俺でした(恥)

逃避でハマった

ダ・ヴィンチコード

今週末は、締め切り2本抱えてて、いつも以上にテンパってますが…

そんなときこそ、逃避が楽しいわけで(笑)
よせばいいのに、読み始めてしまったのが、いま売れまくってる『ダ・ヴィンチ・コード』の文庫判。基本的にこの手の"流行モノ"ベストセラーにはあまり手を出さない俺なんだけど、キリスト教の謎とか陰謀とか、そういうの嫌いじゃないんで…(笑)買ってしまったわけです。

で、読んでみて…1日1冊のペースで行ってます。止まらない…(笑)
さすが、面白いわ…やっぱ世界的ベストセラーにはワケがあるね。
現在「上中下」巻の中巻なんで結論は言えないけど、印象としては「コレって、RPGだわ」でしょうか。
謎があって、人と会ってヒントをもらって、場所を移動して解決したら、また謎があって、それを解決するためにまた人に会って…まさにドラクエとかのRPGの手法です。
なるほどなあ…とか思いながら、明日下巻を買ってしまいそうな俺です。ああ、締め切りが…

セントメリーのリボン

セントメリーKK


さきほど地元吉祥寺の啓文堂書店に行ったところ、光文社文庫の新刊としてこんな本が出てて驚いた。俺の敬愛する作家・稲見一良(いなみいつら)氏の代表作『セントメリーのリボン』である。
1993年、新潮社から初出したこの作品は、稲見氏の4作目の作品で、前作『ダック・コール』で山本周五郎賞を受賞し、満を持して発表した力作だ。本作も第12回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞を受賞している。

俺が稲見氏の作品と出会ったのも『ダック・コール』で、続いてこの『セントメリーのリボン』『ダブルオー・バック』『猟犬探偵』と読み進んだ。もうこの4冊は、どれを取っても傑作。未読の人はだまされたと思って読んでいただきたい。泣きます、どれでも。泣けます、男なら。

稲見氏の作品を貫くテーマはシンプルだ。昔ながらのハードボイルドのスタイルを踏襲しながら、権力や暴力、不正を働く者にはあくまで厳しく強く、弱者や子供にはあくまで優しい。厳しい現実社会で悪戦苦闘する主人公を描きながら、小説世界ならではの夢やメルヘンを忘れない。大人の男の厳しさと少年の夢を一つの作品のなかに同居させるマジックに、小説の醍醐味を感じてしまうのだ。

『セントメリーのリボン』は短編集ながら、稲見氏のそんな作風が極まった作品だと言える。初めて稲見作品に出会う人には最適な作品と思う。どういうきっかけがあったのかは知らないが、今回再版してくれた光文社には大拍手を送りたい。願わくば今後も、稲見作品の再版を続けて欲しいものだ。

エンド・ゲーム

エンドゲーム

恩田陸氏の『常野物語』シリーズ最新作。様々な超能力を持った常野一族の姿を描いたこのサーガだが、今作は一風変わったサイコSFになっている。
連作短編『光の帝国~常野物語(集英社文庫)』の中の『オセロ・ゲーム』の登場人物、拝島暎子とその娘時子のその後の戦いを描いたのが本作だ。『光の帝国』のあとがきで作者は「拝島暎子が夫を取り戻す話は、また別の機会に書いてみたい」と書いていたが、その約束が果たされたわけである。
しかし、タイトルが語る通り、前回は『オセロ・ゲーム』だったのが、今回は『エンド・ゲーム』である。白黒をひっくり返して陣取りするだけでなく、最後まで決着をつけようという意思が現れている。その通り、今回はハードだ。

内面的に異質な『あいつら』を見分ける能力のある拝島母娘。しかも見分けるだけでなく『裏返す』こともできるのだ。人間社会のどこに潜んでいるか分らない敵を見つけて、『裏返される』前に『裏返す』戦いの日々。そして強い力を持ちながら失踪してしまった夫は、敵に裏返されてしまったのか?そんなとき現れた第三者『洗濯屋』とは?錯綜する謎の決着は、あくまで精神世界の出来事だ。それだけに、物語は抽象的にならざるを得ない。『光の帝国』と違って少々分りにくいストーリーになってしまったのは、致し方ないところだろうか。
しかし、拝島母娘の物語はまだ続きそうだ。すっきりとした決着は、さらなる続編を待て、といったところだろうか。
しかし話が抽象的なんで、映画化は難しいだろうなあ…どこかが手を挙げそうな気がするけど。

模倣犯

模倣犯


一度長文のレビューを書いたのに、アップロード時に消えてしまったので再び書く気力が失せてしまった…(汗)

言えるのはひとつ。圧倒的傑作!だということだ。
もう宮部氏凄い!参りました!としか言いようがない。俺などがごたくを並べるまでもなく、五つ星の満点。ぜひ読んでください。

しかし、読後に映画版のキャストを確認したんだけど、中居君の役はそっちじゃねえだろ…と思いません?どっちかと言うと栗橋の方がイメージだと思うなあ。

翼のある子供たち



書評のコーナーをこちらで復活させることにした。
最初に取り上げるのは、『翼のある子供たち/ジェイムズ・パタースン 古賀弥生・訳/ランダムハウス講談社』だ。

コロラド山中にある軍事施設から、美しい少女が逃げ出した。追手は目撃者まで容赦なく殺しながら、少女を追いつめて行く。翼を持つその少女は、巨大な陰謀の秘密を握っているのだ。ひょんなことから少女を助けることになる女性獣医とFBI捜査官。彼らは逃げ切る事ができるのか!?そして翼のある少女の秘密とは…

白い羽が生えた金髪の少女とくれば、それはもう「天使」のイメージ。少女マックス他、数人の「翼のある子供たち」が登場するが、どれも美しくて愛らしい、欧米人の「天使」そのままのイメージだ。そして追いつめる悪役はあくまで極悪非道。子供たちを助ける獣医のフラニーとFBI捜査官のキットも善男善女ってことで、構図はあくまで分りやすいけど、それも追いかけっこサスペンスと謎解きに焦点を絞るという意図があるのかも。一歩間違うと陳腐なストーリーになりそうなところを、分りやすいハリウッド的エンターテインメントに仕上がっている。ラストのカタルシスも印象的で、ついほろりとなってしまいそうに…
小難しい事はさておき、時間を忘れて読書に熱中したい人にはおすすめ。続編の『Maximum Ride』とあわせて映画化も決定してるそうで、これも楽しみだ。その前にぜひ、続編の訳出を!

小松左京

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俺が中学生、高校生の時にむさぼるように読んだ日本のSF…特に小松左京と平井和正はもう血肉となっていると言っても過言ではありませぬ。いま、ささやかながら文章書きでギャラをもらえるようになったのも、かなりの部分両氏の作品のおかげと言っても過言ではないこともなかったりするのです。
ところが!ところがですよ。こないだ資料として小松左京の作品を読もうと思って探したところ、今現在書店にはほとんど流通してないんだそうです!あの作品もあの名作も、いまは読みたくても読めないんだそうです!
いやあ、びっくりしました。世の中間違ってます。いまのくだらねえ流行作家なんか読んでるヒマがあったら、小松左京を読め!と俺は言いたいですねえ(誰によ?)

そんで、実家に帰る用事があったんで、ついでに紙袋いっぱいの文庫本を持って帰ってきてしまいました。まっ茶色に日に焼けた古ぼけた文庫本。でもいまやこれは、日本の宝です(笑)
これからしばらくは、新刊を買うのを控えてどっぷりと古い日本SFにハマってみようと思います。

と、思ったら今朝のニュースでこんな話題が…
これですこし、他の作品も復刊してくれればいんですが。

来てるのか?『初対面の教科書』

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本日夕方の時点で、『太鼓屋放言2』のアクセスランキングで、『初対面の教科書』がサーチワード部門でダントツの1位になってますわよ奥さん!
このままじわじわ来るのかぁ!?